LINE7とLINE8

暑い日が続きますね。

ブーツ好きとしては秋が待ち遠しい。

 

さて、主題の件。

L社の日本支社在籍時、社内に横行する沢山の横文字用語を覚えるのに一苦労していました。アパレル用語に、ジーンズ用語、いくつかは完全に社内でしか通じない用語だったりもしました。

 

何だか気取った感じで大概馴染めませんでしたが、いくつかは好きなものもあり、代表格はLINE7と、LINE8という言葉でした。

 

 

さて、この2つが何を指すかと言うと、

 

LINE7

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は例えばキャピタルEの501。

 

LINE8

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は606Eかな。

 

それぞれの代表アイテムで一応年代は揃えてみました。

 

LINE8に関しては、現行ラインまで含めかなりリーバイス好きな方は、4年ほど前にこの名を関したラインがデビューしたのをご記憶かと思います。あまり売れなかったようで残念ながらすぐに姿を消してしまいましたが。。。

 

実はこの2つは縫製仕様を指していて、LINE7と言えば501(≒RED TAB)タイプの仕様、LINE8と言えば606が代表する簡略化された仕様(≒ORANGE TAB)を示す社内用語でした。このLINE8と言う響きが大好きで、独立し個人事業主になった時、屋号に拝借したくらいです(笑)

 

仕様上の違いは、リベットの有無や、向こう布の生地端の処理であったり、f:id:REDMIKE866:20210719130949j:imagef:id:REDMIKE866:20210719131006j:image

インシームやアウトシームの縫製仕様、f:id:REDMIKE866:20210720151143j:image

バックポケットの付けステッチがテーパーしているか、並行ステッチか、

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が主だったところでしょうか。。。

 

リベットをバーダック(閂止め)に変えているのは簡略化として分かりやすいところですが、縫製面では下糸の交換頻度を減らせる環縫いを出来るだけ多く使い、本縫い並行ステッチは一気に縫製できる二本針ミシンを使うのが基本となります。

先に紹介した606はある意味、簡略化を極めた品番で、前身となる605や351Nからさらに発展?し、インシーム、アウトシーム両方が二本針環縫いとなります。余談ですが605や351NはXX(LINE7)の要素を色濃く残していて、初期はセルビッジデニムを使っているため脇が直線、インシームだけでテーパーラインを出す極端なパターンでした。ガニ股でキレイなパターンとは程遠いものですが、50年代以後、マーロン・ブランドやマックイーンと言ったスター達が501XXの脇を詰めて履いていた事からも、この不完全なパターンに当時リーバイスがトレンドに対応するため試行錯誤していた事が窺えます。

 

話を戻します。

606やワークパンツに主に見られるインシーム、アウトシーム共に二本針環縫いの仕様をジーンズ用語では『巻き巻き』と呼び、今の縫製工場は出来なかったり、出来たとしてもちょっと面倒臭がられるものとなっています。理屈上は効率的なはずなのですが、アウトシームはヨークとフロントポケットの厚みのある段差を連続で越えるため、ここの縫い代がパンクしてしまいがちなのです。また裾が太めのワークパンツはまだしも606のような細身のパンツだと、大股縫いと呼ばれるインシームを巻きで閉じる工程も難易度が上がってしまいます。

80年代以降、ワークパンツなど一見『巻き巻き』に見えても、外脇か内股のいずれかはインターロック仕様に変わったものが増えて行きます。もし内股、外脇ともにダブル、もしくはトリプルステッチの製品をお持ちならぜひ内側から仕様を確認してみて下さい。


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※画像はアウトシームがインターロック+ダブルステッチ、インシームが巻き縫いの90年代製517

 

リーバイス自体、この『巻き巻き』仕様は私が知る限り、90年代以降ビンテージライン以外に見なくなりますが、これには縫製以外の要因も考えられます。

 

80年代、世界で同時多発的にジーンズの製品洗い加工が始まります。当初は完成品を洗うことで予め縮ませたり、生地のノリを落とし硬さをとるのが目的で、ワンウォッシュが中心だったと思われます。しかしその後ストーンウォッシュやケミカルウォッシュ、製品染めなど一気に発展するわけですが、、、その話はまたの機会に。

 

製品洗いは大型の加工機や乾燥機が使われ、一度に100本ほど投入される場合もあるため、製品同士が擦れ、縫製段階では分からなかった不良が顕在化することがあり、生地欠点や、巻き縫い部分のパンクはその主だったところです。

現代では当たり前になった製品加工も、『巻き巻き』をあまり見なくなった理由の一つだと思います。

 

また元々RED TABだったのに、80年代にORANGE TABになった品番もあります。505と517です。

若者向けにプライス戦略をとったのか、はたまたチャネル戦略か、80年代後半〜90年代、RED TABとORANGE TABが並走していたので、後者かも知れません。

 

高校生時代、私は前述の606同様に、505や517がとても好きで、当時、明確な違いは分からないなりに脇が割り仕様の505や517のほうが色が濃いので、そちらを選んで買っていました。次第にタブがオレンジ色のものや、RED TABでもアウトシームがインターロックのものが多く流通するようになりますが、生地も縫製もどうにもチープに感じてしまい、いつしか手に取らなくなって行きました。今見るとLINE8仕様の505や517もとても魅力的なんですけどね(笑)

 

先日、オークションでちょうど私が当時着ていた505と同じ仕様のものを発見!競り合いになり、ちょっと高く付きましたが、何とか落札出来、この記事を書くキッカケになりました。

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この一本は資料にせず、リジッドから履いていきたいと思います。実はリジッドから育てるのが大の苦手なのですが、、、今回は記録を残しながら変化を見ていくつもりです。